9月11日のシンポジウムでは登壇された社会的養育経験ある若者や支援者の他にもたくさんの方々に「想い」を語って頂きました。参加された方々の「想い」をご紹介させていただきます。
社会的養護のその後の人生のほうが長い時間になるのだと思います。助けが必要なとき、SOSを発信できるつながりと手厚い支援があることで、自らの人生を切り拓いていけるのではないでしょうか。そうできるよう社会(地域)を紡いでいきましょう。私もその輪の中に入れてください。
(いちはら生活相談サポートセンター/ちこネット(千葉県生活困窮者自立支援実務者ネットワーク)大戸優子さん)
どんな人であっても(たとえいま元気に働き、それなりに充実した日常生活を送れていると感じる人でも)、病気や災害、身近な人の死などによりケアを必要とする状況に陥ることは当然のようにあるかと思います。それと同時に、「社会的養護」をはじめ、家庭や学校に安全・安心な状態で居られなかった人たちは、連鎖するように様々な困難を抱えやすい状況に置かれていると思いますし、それは年齢を重ねてからも続いていくように思います。特に心理的な面に関しては、むしろ大人になってから症状として自覚したり影響が出てきたりすることが多いことは想像に容易いです。
まちのなかに確かに存在しているはずのそうした人たちを見つけ、声を聴き、生まれによって定められた家庭や学校では経験することのできなかった豊かな体験や必要なケアがなされていくために、それぞれがそれぞれのやり方で実践しながらも、やはり同じ方向を向いて思いを共有・連携できることが必要不可欠であり、(こうして口にすることはとても簡単ですが)規模感や大人自身の疲弊感も含めて(笑)そこを構築していくことが一番難しいところなんだろうな、と感じました。(中野佑美さん)
ホームを出て一人暮らしなどをはじめた子たちと、細く、長く繋がっていけるようにしたいと考えています。自立援助ホームで暮らせる期間は長い人生のうちのほんの一瞬、とても短いです。ホームを出てからたくさんの苦労をしたり誰かに頼りたいと思う時がくると思います。そんな時に頼れる資源の一つになれるように、ホームで生活している時から関係作りは始まっていて、頭ごなしに否定せず本人の意見を尊重したり、他愛もない日常会話を大切にしたり、美味しいと言ってもらえる料理を作ったり、一緒にテレビを見て笑ったり、仕事の相談を受けたり…一つひとつを大事にしながら同じ時間を共有し、関係を築けるようにしています。
「人に相談できる」というのは簡単なことではないと思います。相談し、人に頼れるような経験を積んで欲しいと考えています。そのためには小さなことでも、応えてあげられるようにしています。自分の思いを聞いてもらえたり、応えてもらえた経験が大切だと思います。
ホームを出た子たちとの関わりとして実際にしていることといえば、寄付でいただいた食料を届けたり、仕事の相談を受けたり、引越しの手伝いをしたり、誕生日のお祝いに食事に行ったり…色々なことをしているなぁと思いますが、繋がれている事に感謝しています。(産まれた子の保育所の面接に付き添ったり、家族の葬儀に付き添ったりしたこともありました。)ホームを出てからも、何かあってもなくても連絡を取り合えるような“実家“のような存在になれたら嬉しいです。(自立援助ホーム 未来の杜 平安洋一郎さん 平安明希さん)
私は社会的養護やまた支援の場で一度かかわった方々とはその後も関わっていくことが当然だと思っています。その根拠をどう示せばいいのかまだわかりませんが・・・。支援者としてよく「何かあったら電話をして」「何かあったら相談して」という言葉をよく使ってしまっていました。でも何かないと連絡してはいけないということを示していたような気がして、今これまで自分がやってきたアフターケアの実践を悔やむ日々です。措置機関はアフターケアは1年のみと期間を設定していました。施設を出てからこそが様々なことに出会い、そして人の生活は常に環境との交わりでいくらでも変化し、いいことも大変なことも起きるのに・・・。何かあった時に頼りたいと思う場はどのような場所、どのような人だったらいいのか。もっともっと当事者の声を聞き、何が必要なのかどうすべきなのか考えたいと思いました。(研究者)
どこにいても安心して繋がれる場所・人があればいいなと思います。(市民)
児童養護施設の支援を始めた当初は、施設での生活の支援が中心でした。数年たって高校を卒業して巣立ちを迎える若者が出たころから、本人の希望がかなえられるよう、進学や一人暮らし、資格取得のための資金の支援を始めました。経済的に苦しい生活ですが、支援者につながっていれば何とか乗り越えられるのではないかと思います。忘れていないよという想いを伝えるためのふるさと便など、施設退所後のすべてのケアリーバい届けたいと思います。(支援団体職員)
静岡県にて施設のボランティア経験を通して、アフターの子と交流するうちに、アフターケアの必要性を実感しました。これまでは個人的に1人の子に寄り添いながらアフターについて情報を集め勉強してきました。しかし、公的機関である児相や施設やアフター担当だけでは足りないことや隙間ができてしまう事を痛感しました。地域社会の中の人や職場となる会社など地元の人資源を発掘し広げて繋がることが、当事者だけでなく地域全体にとっても理想的で生きやすくなると思っています。静岡県にはアフター支援団体も少ないので、なんとか形にしたいと思い構想中です。ただの一市民ですが…(市民)
次の一歩が踏み出せるよう、背中を押すまでが自分の構想でしたが、躓いたときには、何時でも戻ることができる、居場所や馴染みの関係性が必要なんだなと思いました。絢香の「はじまりのとき」「ツヨク想う」のメッセージをそのままに、そんな居場所と関係性を続けられたなら、それがアフターケアだと、この日のシンポジウムの感想です。(コミュニティハウス ここからいっぽ 高田俊彦さん)
りささんのように一時保護所へ措置され家庭復帰したものの、劣悪な家庭状況のなか登校し続ける生徒が少なくありません。3年前から中核やフードバンク、民間団体の力を結集しセーフティネットの役目をもつ校外居場所カフェの活動をしています。また校外居場所カフェでは高校を中退した生徒の編入試験を受ける準備の支援も行っています。アフターケアはどんな小さなことでも支援者が行動を起こすことが大事かなと思います。(千葉県スクールソーシャルワーカー 中村容子さん)
当事者を含めた社会資源の連携・協働がアフターケアに繋がるのではないかと思いました。(石井智美さん)
支援するされるという感覚もなく、若者たちが自身で選んだ場所で、生き方で幸せを感じながら生きていける地域になり、広がっていくことを夢みています。そのためにフォーマル、インフォーマルに関わらず関わり手を増やし、持続していく仕組みづくりと併せて具体化し、微力ながらも進めていきたいと思っています。(滋賀県地域養護推進協議会(滋賀県社協) 遠城孝幸さん)
アフターケア・・・アフターというからには、そのビフォーに何かある、ということです。ケアリーバーであれば社会的養護での生活、またそこに至った経過の中でのしんどさですし、施設等の経験がなくても、何らかの課題やしんどさがあった、ということです。アフターケア自体、その方法論の構築や支援体制の充足、また社会資源を増やしていくことなど、多くの課題や目標があると思います。
さらに大事だと思うことは、例えば、社会的養護に関してはアフターケアを行うなかでインケアやリービングケアの課題が見えてくるのだと思います。そうしたものを、アフターだけに留めておかず、施設などにフィードバックし共有することで、よりよい社会的養護のあり方やアフターケアにつながると思います。
社会的養護出身ではない若者の支援からは、例えば虐待や家庭内の問題、またそれらに対する支援体制などに関する、アフターからだからこそ見える課題が浮き彫りになるかと思います。そうしたものを児童福祉の領域と共有していくことが必要かと思います。
シンポジウムでもありましたが、出会う支援者との相性の良しあしは必ずあると思います。人はとても大事ですが、同じくらいシステムが大事だと思います。人を育てることと、仕組みを作っていくこと両輪で進めていくことが重要だと思います。(滋賀県地域養護推進協議会 中島円実さん)
終わりがないもの、ずっと続いていくもの。そう思ってもらえるように、関係性を作っていきたいと日々思っています。(支援団体職員)
アフターケアの具体的なイメージが持てるようになりました(市民)
今までは児童養護施設で働いてきました。ひとりひとりのサポートは異なり、今までないこともやってみること、できることを探しつつ、生活で必要なことを一緒に考えて、身近な地域の人につながること、行政と民間、民間同士、他職種の連携が必要と感じています。(高木千乃さん)